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トイレの水漏れで「便器と床の間から水が漏れて来る」という水漏れ症状があります。この水漏れの場合、原因は複数考えられますが、その原因の一つに「フランジからの水漏れ」というものがあります。フランジからの水漏れと聞いて、「フランジ?」「何それ?」「聞いたことない」という反応になる方も多いと思います。今回はトイレのフランジが原因で起こる水漏れについて、フランジの役割や形状、フランジ水漏れの原因や見定め方、フランジ水漏れの修理ポイントなどについて解説して行きます。
目次
トイレのフランジは全てのトイレに設置されている訳ではありません。そこで先ず、トイレには2つの排水タイプがあるということから解説して行きます。
トイレには2つの排水タイプがあります。それは「床排水タイプ」と「壁排水タイプ」です。
2つの大きな違いは排水管が露出しているかいないかです。
床排水タイプの場合は便器の真下で接続しているので排水管は露出しておらず、一方で壁排水タイプの場合は、便器の後ろから壁中の排水管まで露出の排水管が設置されています。ちなみに壁排水タイプのトイレをPタイプと言うこともあります。
設置されている数は床排水タイプが多く、戸建て、集合住宅問わず、多くの住宅で設置されています。壁排水タイプは設置数が少なく、団地などの集合住宅でよく設置されています。トイレのフランジは床排水タイプの便器に設置されているもので、壁排水タイプには設置されていません。
壁排水タイプの場合は便器と床の間付近で水漏れが起きてもフランジが原因ということはありません。
それでは床排水タイプに設置されているフランジについて細かく解説して行きます。
トイレのフランジは便器と床下排水管を接続する為の部材です。形状はいくつかタイプがありますが、ベーシックなフランジは平たい円の形状をしていて、床下排水管と接着していて、床にビス留めされています。便器は陶器で出来ていて床下排水管は塩化ビニール製なので、そのままでは密閉することが出来ません。
この便器と床下排水管を密閉して接続する為にフランジが設置されているのです。便器の排水出口とフランジの間は「フランジパテ」という部材で水漏れしない様に隙間を埋めています。また、フランジにはTボルトという2つのボルトがあり、このTボルトで便器とフランジを固定しています。
フランジパテは大きな円形のパテで、粘着性が強くベトベトした素材の部材です。このフランジパテで便器の排水出口とフランジの間を密閉しています。
ちなみにフランジパテを取り付けて設置した後に便器を取り外す場合、付いているフランジパテの再利用は出来ません。
これは再利用をすると水漏れを起こす危険性が高いためです。良くあるケースがトイレの詰まりで便器の脱着をする時です。尚、便器と床下排水管の接続にもいくつか種類はありますが、便器とフランジをフランジパテで接続している場合は便器脱着時にフランジパテの交換も必須になります。
ちなみに、フランジパテは「ガスケット」「Pシール」という呼び方をされることもあります。
便器と床下排水管の接続はいくつか種類があるとお伝えしましたが、基本的な種類は以下の様になります。
便器と排水管接続種類 | フランジパテ | 特徴 |
---|---|---|
便器 ↓ フランジ、床下排水管 |
有り |
・便器とフランジをフランジパテで密閉している ・昔のトイレやユニットバス内のトイレはこのタイプが多い |
便器 ↓ 排水アジャスター ↓ フランジ、床下排水管 |
有り |
・便器とフランジを排水アジャスターという部材で接続している ・排水アジャスターとフランジをフランジパテで密閉している ・近年のトイレに多いタイプ |
便器 ↓ 排水アジャスター ↓ 床下排水管 |
無し |
・排水管に直接、排水アジャスターを接続している ・フランジは無く、フランジパテも使用しない ・近年のトイレに多いタイプ |
トイレ室の後方の壁面から床下排水管の中心までの距離を「排水芯」と言いますが、この排水芯は住宅によって様々です。壁に近い100mm程度の排水芯もあれば、壁から遠い500mm程度の排水芯もあります。尚、便器は陶器製なので排水出口は固定されています。
しかし、排水芯100mmでも500mmのトイレ室でも同じトイレを取り付けることが可能であり、それを可能にしているのが排水アジャスターです。
フランジ周りで起きる水漏れにはどのような原因があるのかを見て行きましょう。主な原因は以下の3つとなります。
それでは一つずつ解説して行きます。
ンジパテが劣化して、パテに隙間が出来るとそこから水漏れが起こります。この水漏れは、経年劣化+便器の固定が甘くなると起こりやすくなります。便器は人が座るので、使う度に数十キロという重さと振動が加わります。その振動は便器と床、及びフランジを固定しているビスやナットにも伝わり、使用回数が増えるほどにビスやナットは緩みやすくなります。座った時の振動で固定用のビスやナットが完全に外れるということはまずありませんが、それでも5mmや10mm程度、緩むことはあります。
便器がガタガタ動くという状態ですね。ガタガタ動けば動く程、フランジパテは引っ張られて密閉状態を保てなくなり、隙間が出来て水漏れが起きるという訳です。
フランジパテは水に強く、防水の効果はありますが、便器とフランジパテ、フランジとフランジパテ、排水アジャスターとフランジパテ等、接地面に水が付くと一気に粘着力が落ちるという特性があります。
フランジには、2本のTボルトを取り付ける為の2つの溝があります。フランジの溝はTボルトを引っ掛けるような形状になっていますが、その溝周りは薄く、細くなっているので比較的に強度は弱くなっています。また、この水漏れもフランジパテの不具合同様、経年劣化+便器の固定が甘くなると起こりやすくなります。便器がグラグラ動くとTボルトを引っ掛けてあるフランジの溝に大きな負荷がかかり、結果、割れてしまうことがあります。フランジが破損してしまうと便器のグラつきも大きくなって、水漏れの量も多くなります。
Tボルトは鉄製なので水が付くと錆びてしまいます。しかし、本来Tボルトは水がかからない場所に設置されているのに、なぜ錆が発生するのでしょうか?主な原因は以下のことが挙げられます。
Tボルトがサビてしまうとナットが固着して動かなくなる為、締め込むことが出来なくなります。また、錆による腐食が進むとワッシャーがボロボロになって欠損し、便器を固定することが出来なくなります。
ちなみにTボルトのワッシャーは平たく薄い円形の金属で、ナットの下に取り付けることによって便器を固定するのに役立っています。
Tボルトのワッシャーが錆で腐食して欠損しても便器がグラグラと動く為、フランジパテに隙間が出来て水漏れするようになります。
フランジが原因で起こる水漏れは基本的にトイレを流さないと水漏れしません。しかし、フランジから漏れ出した水が便器下に溜まっていることが多く、トイレを使っていなくてもジワジワ漏れ出して来ます。便器が取り付けてある状態だとフランジからの水漏れかどうかは判断が難しいですが、それでも確認できるポイントがありますのでご紹介します。
それは便器がグラグラ動くかどうかです。便器と床の間から水漏れしている状態で、便器を手で少しゆすってみてガタガタと動くようであればフランジ周りからの水漏れの可能性が高くなります。フランジパテの劣化なのかフランジの破損なのかTボルトの錆化による腐食なのかは便器を取り外して見ないと断定できませんが、便器がガタガタと動いて水漏れする場合はフランジ周りの水漏れと判断して、業者に頼んで便器の取り外し調査を行った方が良いです。
便器がしっかり固定されてる場合はタンク下からの水漏れ、ウォシュレットからの水漏れなど、外側からの水漏れの可能性が高いでしょう。
フランジ周りの水漏れの場合、修理には原因となる部材の交換が必要になります。
それでは、フランジが原因の水漏れ修理のポイントを見て行きましょう。
フランジパテ交換のポイントは「古いフランジパテをキレイに取り除くこと」と「接地面の水分を取り除く」ということです。フランジパテはベトベトした物なので、物によってはキレイに取り除くことが難しく、ヘラやマイナスドライバーなどで地道に取り除く必要があります。また、新しいフランジパテを取り付ける時に接地面に水分があると密閉できずに水漏れしますので、水分を取り除く必要があります。
フランジの交換は難しい作業となります。フランジは床下排水管に接着してある為、フランジの取り外しが難しい点になります。手法はいくつかありますが、一つの方法をご紹介します。
①まず、フランジの大きな円の下をノコギリで切断します。
すると床下排水管と床下排水管に接着してある残りのフランジが出て来ます。
②トーチと言われるガスバーナーで適度に熱すると接着剤が溶かします
これにより残りのフランジを取り除くことが出来るようになります。
ちなみに、フランジの交換ができればトイレの交換も出来ると言われるほどポイントになる作業です。
Tボルトがサビている場合はナットを回そうとしても回りません。ナットが回らない場合はCLE556等を付けてトライしてみると良いでしょう。
それでナットが回るようであればTボルトを交換すればOKです。
ちなみに、Tボルトの錆はフランジパテの劣化、フランジの破損よりリスクが高いトラブルと言えます。
その理由は、フランジパテの劣化もフランジの破損も便器を取り外して修理することが出来るのに対し、Tボルトの錆は便器の取り外しが出来ないケースもあるからです。最悪の場合は便器を割らないと取り外し出来ないということもあります。この場合は当然、便器の交換が必要になります。
フランジが原因で起こる水漏れをDIYで修理するのは難しいですが、フランジからの水漏れついて知っておくと焦ってパニックになることや効果の無い作業をすることなく、業者へ連絡をすることが出来るでしょう。フランジからの水漏れの可能性がある時は、早急に業者へ連絡することが大切です。